「そろそろ真弓ちゃんが結婚するらしい」という噂は、どうも二、三年前からあがっているようだ。

一体、その結婚相手に誰のことをさして言っているのだろうかと私だって興味がある。と同時に、私の

周りには私に“結婚してほしい”と期待してくれている人がいることも知った。　　　　　 　　　　　

 私は、入院中に身体に障害が残ってしまうことがわかったと同時に、女であることも消

えてしまったような気がして、二度と恋愛感情も抱けなくなってしまったように 思ってい

た。しかし、半年間は止まっていた生理がまた戻った時に、「まゆみちゃんも子どもは産め

るのよ」と言われ、少しずつ自分が女であるという意識を取り戻してきた。　　　　　　　

兵庫リハに入院中には、年下のある男の子に「まゆみ」と呼ばれるようになり、二人でいろいろと話をす

る時間が多くなっていった。彼は、どうやら私の眠っていた゛女心″を目覚めさせてくれたらしかった。

それ以来、私は何人かの男性に恋をした。しかし、いつの間にやら消極的になり、自分の気持ちにブレー

キをかけようとする私もいた。障害者となるまでの私は、決して恋に臆病ではなく、好きな人には好きだ

と自分の気持ちを伝えることをためらわなかった。自分の気持ちに正直にいたいと思う気持ちは昔も今も

変わりはないが、今の私が相手にふられたなら、その理由として゛私は障害者だから″と一番に思ってし

まう。　 　　　　　　　　　　　　　　　     　                    　　　　　　　　　　　　　　

人は恋をすると、相手の気持ちを求め愛されたいと思う。これは自然なことだと思うが、同時に

私には ゛私なんか何もしてあげられないし…″という気持ちも溢れてくる。